日本ー悲劇の記憶を風化させてはならないという若者の固い決意

 人口33万人を数える福島県最大の都市であり、温泉と世界最大のアウトドアリゾートテーマパークと農産物栽培で知られる福島県いわき市。慶應義塾大学法学部四年生の沼田侑也さんは、この3月の大地震と津波により被災した郷里のいわき市の再建のために取り組んでいる。4月には、同郷の友人で一橋大学商学部四年生の渡邉敏康さんと共に、他の在京のいわき出身者の有志の学生達と一丸となって、郷里の再建を積極的に推進するための学生による活動枠組みを作ろうという機運が高まった。
 こうして、具体的で前向きな事をしたいという気持ちが一つになり、「リトルいわき」という学生団体が結成された(グループの正式な名称は、Little IWAKI?学園祭発。学生によるいわき応援プロジェクト?)。今日では、簡単に覚えてもらえるようにと「リトルいわき」の名で活動を展開している。
 いわき市が、温泉以外にも、農産物が国内で高い評価を受けてきたことを受けて、「リトルいわき」のメンバー達は、この春に、都内の人で賑わうスポットでいわき産の新鮮な農産物の販売にも参加した。「メイドインイワキ」のイチゴ、トマト、じゃがいも、人参の販売の試みは成功を収めた。
 メンバー達の掲げるプロジェクトは、短期と長期の二つの主要目標がある。短期目標は、国内の消費者に、引き続きいわき産の農産物を購入・消費してくれるよう説得するである。それは、いわきの経済の再建に貢献し、また食の観点から見た農産物の安全性を伝えるためだ。放射線量の水準は過去最高を記録したが、四月中旬以降正常化しており、いわき市の公式データによると、毎時0.11マイクロシーベルト前後の値が観測されている(非公式には、いずれの場合も、毎時0.22マイクロシーベルト以下の水準)。
 日本では秋は大学の学園祭のシーズンという伝統があり、「リトルいわき」は都内の数カ所の大学で模擬店の開設し、いわき産の農産物を使った料理を販売しようと企画している。このプロジェクトはいわき市役所のバックアップとJAの協力を得て準備がなされており、JAがいわきから都内への新鮮な農産物の搬入を担当する予定である。
 さらに、こうした販売活動に加えて、より重要な長期的な目標がある。原発問題も未だ収束しておらず、メンバー達にとって根源的なことは、いわきにとっても日本全体にとっても震災の記憶を風化させないことである。「リトルいわき」は、こうした活動を通じて、今回の悲劇を人々や国内外のマスコミの記憶に留めておく必要性を発信している。侑也さんと敏康さんとその仲間達は、いわきへの関心が薄れないようにと心を砕き、「いわきで発生して現在進行していることは、これからも日本だけでなく世界全体の心の中にしっかりと刻まれ続けていくべき。」と語っている。

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